Once in my life

感謝祭の後のシアトルの街が好きだったわ。
いちばん好きだったのは、ベルビュースクエアかしら...
クリスマスライトに飾られたウインドウを眺めているのが楽しかった。
ダンスパーティに着てゆくドレスを見つけられなくて、少し冷めかけたピザパイを持て余していたのよ。
ユーナスは、スウェーデンからのエクスチェンジスチューデントだった。
アメリカの食べ物はあじけないとか言いながら、何枚もピザをおかわりしていた。
秀才のユーナスには、学校の課題で世話になりっぱなしだったし、センスのいい彼に ドレスをみたててもらおうと思って、ショッピングセンターに来ていたの。

気に入るドレスは見つかりそうもないし、ピザソースを口のまわりにつけたままにしている彼を見ているのもうんざりしてきた。
「ねえ、もうドレスはいいわ。寒くなってきたから帰りましょう」
「僕は、なんとしても君のドレスを見届けたかったけれど、それじゃ帰ろうか」
そう言いながら、ユーナスはようやく口のまわりのソースを拭いたの。
外は粉雪が舞っていたわ。
「冷えるはずね、雪よ」
Ya!
ユーナスは口を大きく開けて雪を食べはじめたの。そんな彼を見ていたら秀才なんだかバカなんだか、わからなくなったわ。

駐車場の近くのバス停には、たくさんの人たちがバスを待っていたわ。
大半は、ボートピープルと呼ばれる移民だった。
どこに車を停めたのかわからなくなってしまったユーナスは、慣れないスラングで、口汚く自分をののしりながら歩いていた。やがてバスは停車場について、ボートピープルも乗り込みはじめたの。ユーナスは、バスの運転手に駆け寄ると、今度は紳士的な口調でなにかモンクを言いはじめていた。落ち着きのない男...
「バスはまだ空いているじゃないですか、この人たち全部乗れますよ」
「ボーイ!この先でも勤人が待っているんだよ」
「じゃあ僕らは乗れますか?」
「ああいいよ」

ユーナスは、雪のような白い肌を赤く染めて、バスに飛び乗ると大声で私をよんだわ。早く皆をバスに乗せてと言うから、私は何だかわからないけど皆の腕をとって頭の上の荷物といっしょに乗せたわ。子どもの手は信じられないくらい細かったし、女性達も痩せていて軽かったわ。ユーナスは、子どもの手のひらにキャンディをのせて、ピエロみたいにはしゃいでいたわ。

帰りの車の中で、ユーナスは無口だったけど、やがてこうささやいたの。
Norico,I really...I think may be..I am crazy about you.

去年のクリスマスカードには、写真が添えられていたわ。口ひげをはやして、立派な中年男になったユーナスは、やっぱりピエロみたいに笑っていたの。
彼のコラムは、 Soooo....difficult だけど、今夜こそ徹夜して解読してみるわ。


川村法子(2001.2.14)
Copyright(C) 2001 Noriko KAWAMURA


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